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2024/03/21

パワハラ加害者の配置転換に対する注意点

業務上の必要性の判断が重要となる場合がある

パワハラ加害者の配置転換に対する注意点

業務上の必要性の判断が重要となる場合がある

 ハラスメント相談窓口に従業員からパワーハラスメントを受けたとの訴えがあった場合、どのような対応をすべきか

使用者は、労働契約上、労働者に対してその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとするという安全配慮義務があります(労働契約法第5条)。さらに、職場におけるパワーハラスメント(以下、パワハラ)に関しては労働施策総合推進法上、「労働者からの相談に応じ、適切に対処するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」(第30条の2第1項)と定められています。
 したがって、使用者は、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景として業務の適正な範囲を超えて、精神的、身体的苦痛を与える行為または職場環境を悪化させる行為(パワハラ)に関しては、それを防止する義務があり、同時にパワハラの訴えがあったときは、事実関係を調査し、その結果に基づき、加害者に対する指導、配置換え等を含む雇用管理上適切な措置を講じなければなりません。
 パワハラが起きた場合には、加害者と被害者が同じ職場で就労し続けることは、その被害を継続、拡大させる恐れがあります。将来、再度同様の事案の発生を防止するためにも、加害者と被害者の接触の機会を可能な限り減らす配慮が必要です。加害者の配置転換により双方が同じ職場で働くことがなくなれば、接触の機会も減り、再発防止のためにも有効な措置といえます。
 厚生労働省の「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(パワハラ防止指針)」(令和2年厚生労働省告示第5号)ではパワハラの事実が認められた場合に、加害者(行為者)に対する適切な措置の例として「行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。あわせて、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を講ずること」と配置転換を取り上げています。
 しかし、配置転換に対する使用者の人事権の行使にあたっては、次の点に注意しなければなりません。
まず、職種または勤務地が限定されているなど雇用契約上の制限がある場合には、配置転換命令を出しても契約違反として加害者は拒否することができます。
 また、雇用契約上の制限がない場合でも、配置転換が人事権の濫用ととられなように注意しなければなりません。加害者とはいえ、配置転換による労働環境の変化は不利益が生じることにもなります。配置転換が使用者の権利濫用法理により無効とされるかどうかは、業務上の必要性と労働者の不利益のバランスにより判断されます。つまり、加害者から配置転換無効の訴えがあった場合には、パワハラの内容や程度によって業務上の必要性の軽重が測られることになります。
 パワハラの内容が悪質である場合や、被害者の精神疾患等に至るなど被害が大きい場合は、加害者としては配転命令によってそれなりの不利益を甘受しなければならないと判断されるでしょう。しかし、加害者を懲罰目的でほとんど仕事のない部署へ配置転換したりすると、権利濫用として命令が無効と判断されたり、配置転換そのものが新たなパワハラにあたるとして争われることにもなります。
 したがって、パワハラ加害者に対する配置転換にあたっては、パワハラの程度等を踏まえて、その配置転換が適正なものかどうか慎重に検討しなければなりません。